第143回芥川賞は赤染晶子氏『乙女の密告』、直木賞は中島京子氏『小

morinobu20072010-07-16


◎第143回芥川賞赤染晶子氏『乙女の密告』、直木賞中島京子氏『小さいおうち』が受賞
7月15日19時24分配信 オリコン
 日本文学振興会は15日、第143回芥川賞直木賞(平成22年度上半期)を発表した。芥川賞赤染晶子氏『乙女の密告』、直木賞中島京子氏『小さいおうち』が選ばれた。

 赤染晶子氏の『乙女の密告』は、1回目の投票から票の過半数を獲得。投票は3回続いたが評価は変わらず受賞に至った。芥川賞選考委員の小川洋子氏は「最終的には鹿島田真希さんと赤染さんが残り、2作受賞になるかどうかという点でもっとも長い時間をかけた」と選考の過程を語り、最終的に「“アンネ・フランクを密告したのは誰か”という歴史的・社会的なものを題材にもってきつつ、“自分は誰か?”という文学的なテーマに落とし込んでいる」(小川氏)という赤染氏の作品のみが3回の投票すべてで過半数の票を集めていたことを理由に、1作品のみの受賞となった。
 一方の直木賞は、道尾秀介氏と中島氏の2作が残り長い協議が繰り返されたが、最終的に中島氏が受賞となった。直木賞選考委員の林真理子氏は「戦前の中産階級の家庭をいきいきと描いている。また、中島さんは膨大な資料を読んでおり、読み込み方のなめらかさも素晴らしいという意見があった」と中島氏の作品が選ばれた理由を語った。
 赤染晶子氏は1974年生まれの35歳。京都外国語大学卒業ののち、北海道大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻修士課程を修了。『初子さん』で第99回文學界新人賞を受賞し、その後『まっ茶小路旅行店』、『花嫁おこし』、『うつつ・うつら』などを発表。
 中島京子氏は1964年生まれ、東京女子大学卒業。日本語学校や出版社に勤めたのち、フリーライターを経験。2003年に『FUTON』で小説家デビュー。これまで『イトウの恋』(講談社刊)、『ツアー1989』(集英社刊)、『桐畑家の縁談』(マガジンハウス刊)、『冠・婚・葬・祭』(筑摩書房刊)、『女中譚』(朝日新聞出版刊)などを発表している。
 昭和10年に制定された芥川賞直木賞は、新聞・雑誌に発表された作品のなかから(直木賞は単行本も含む)、芥川賞は純文学短編作品、直木賞は短編・長編の大衆文芸作品の中から優秀作を選定する。1月14日に発表された前回(平成21年度下半期)は、芥川賞が1999年上半期以来の"該当作なし"、直木賞佐々木譲氏『廃墟に乞う』と白石一文氏『ほかならぬ人へ』が受賞した。
 今回ノミネートされた作品は以下のとおり。
●第143回芥川賞 候補作品
赤染晶子乙女の密告』(新潮6月号)
鹿島田真希『その暁のぬるさ』(すばる4月号)
柴崎友香ハルツームにわたしはいない』(新潮6月号)
シリン・ネザマフィ『拍動』(文學界6月号)
広小路尚祈『うちに帰ろう』(文學界4月号)
穂田川洋山『自由高さH』(文學界6月号)
●第143回直木賞 候補作品
乾 ルカ『あの日にかえりたい』(実業之日本社
冲方 丁『天地明察』(角川書店
中島京子『小さいおうち』(文藝春秋
姫野カオルコ『リアル・シンデレラ』(光文社)
万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(筑摩書房
道尾秀介『光媒の花』(集英社