<放射性物質>安全、頼りは線量計 無料貸し出しに父母殺到

morinobu20072011-05-24

放射性物質>安全、頼りは線量計 無料貸し出しに父母殺到


 東京電力福島第1原発事故によって放射線量が比較的高い福島市で、住宅地から外で遊ぶ子供の姿が消えた。暑い中、長袖に手袋の重装備で通学する児童もいる。市民グループ線量計の無料貸し出しを始めたところ、申し込みが殺到し途中で受け付けを打ち切った。事故が収束せず、影響を巡って専門家の見方も分かれる中、親も子も果てしない「神経戦」を強いられている。【井上英介】
 「うちの子も、よその子も外で遊ばない。近所で子供は見かけません」。福島市東部の住宅地で、小6の長女(11)と小3の長男(8)を育てる女性(38)は言う。
 最高気温30・3度で今年初の真夏日となった19日ですら、下校する小学生たちは帽子を深くかぶり、マスクをしていた。マスクをさせないと、親が責められる雰囲気があるという。中には、長袖ジャンパーに長ズボン、手袋で肌を隠す子もいる。長女に「放射能怖い?」と聞くと、笑顔で即座に「怖くないよ。外で遊びたい」。
 女性はこの日、借りてきた線量計で、自宅の中や庭、道路を挟んだ向かいの家庭菜園の放射線量を測った。玄関先の鉢植えに線量計を近づけると毎時3・9マイクロシーベルト。「5日前に測ったら2・4マイクロシーベルトだったのに。水で洗い流せばいいのか……。除染の仕方も分からない」と途方に暮れた。
 家庭菜園では同居する母(71)がナスを育てる。「畑は線量が高いので、家族で話し合い、一切触れず放置することにしました」。畑いじりが好きな母は「生きがいがなくなった」と寂しげだ。
 同市鳥谷野(とやの)の辺見妙子さん(50)も、線量計で何度か測った。「原発事故前後で風景は何も変わらないのに、暮らしは一変した」。庭の線量が高く、近く除染を行う。引き抜いた雑草や削った表土を袋に入れ、庭の片隅に埋めるという。
 仲間と09年「青空幼児園たけの子」を結成し、徹底して外遊びをさせる幼児保育に取り組んでいる。2〜5歳児を5〜6人預かり、雨の日も雪の日も外へ連れ出してきた。だが、原発事故を境に次々県外へ避難し、今は1人。「外へ出せば、将来どんな影響が出るか。閉じこめればストレスがたまります」。辺見さんは涙ぐむ。
 2人に線量計を貸した市内の市民グループ「子供たちを放射能から守る福島ネットワーク」は、原発事故後に数人で結成された。メーリングリストの登録者は既に300人。15日に線量計の無料貸与を始めたところ、申し込みの電話が鳴りっ放しの状態となった。2週間先までの予約が2時間で埋まり、受け付けを打ち切った。グループのメンバーは「驚きました。子供を避難させられない親が今、本当に苦しんでいる」と話す。

☆深刻な問題だ・・