<脱水>冬もリスクが身近に 「かくれ」に気をつけて

morinobu20072012-11-30

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<脱水>冬もリスクが身近に 「かくれ」に気をつけて
毎日新聞 11月29日

 ノロウイルスなどの感染性胃腸炎やインフルエンザが気になる季節になった。国立感染症研究所の発表によると、感染性胃腸炎の患者が過去10年で最も流行した2006年に次ぐペースで増加しているという。例年、ピークは12月とみられることから、厚生労働省でも注意を呼びかけている。そこで気をつけたたいのが「脱水症状」だ。

 ◇脱水で体液失う スポーツドリンクより経口補水液

 ノロウイルスやインフルエンザにかかると、発熱、下痢、嘔吐(おうと)などの症状が脱水を招く。兵庫医科大学の服部益治教授によると、下痢や嘔吐は、胃液や腸液などの体液を放出するもので、単に体の水分を失うのではなく、水分とともにナトリウムやカリウムなどの電解質も喪失してしまうという。
一般的にヒトは体重の60%が体液といわれる。新生児の割合が約80%なのに対して、高齢者は約50%。しかも高齢者は細胞内の体液が少なく、「予備が少ない」状態だ。一方で一見すると体液がたっぷりの新生児も、細胞外に存在する体液が多いため、失いやすい傾向にあり、新生児と高齢者は特に要注意だ。

 では失われた体液は、どのようにして補えばいいのだろうか。民間会社の調査では「子供が脱水症の時、どのようなもので水分補給をするか」との問いに、73.0%が「水」と回答。次いで大人用のスポーツドリンクを薄めたもの(53.4%)、乳幼児用のイオン飲料(44.0%)と続く結果が出た。しかし「水」では体液を補うことはできない。
脱水時の補水は、体液と同様の成分を持つ「ブドウ糖」「水」「ナトリウム」を含む「経口補水液」が有効だ。神奈川県立保健福祉大学の谷口英喜教授によると、患者や医療従事者の負担を考慮し、飲むことで点滴とほぼ同じ早さと効果が得られる「経口補水液」が近年、出回っているという。
一般的に「スポーツドリンク」と呼ばれる飲料はナトリウムを100ミリリットルあたり40〜80ミリグラム含むのに対して、経口補水液は120ミリグラム含む。また前者の定義があいまいなのに対して、「経口補水液」は世界保健機関(WHO)などが厳格に定義し、その効果を認定していることも大きな違いだ。

 ◇脱水は「かくれ」に注意

 ノロウイルスなどの感染性胃腸炎やインフルエンザなどからくる病態が「脱水症状」のリスクとなるのに加え、室内外の乾燥も脱水症状を招く要因となる。夏は熱中症予防などで水分補給に気遣うことも多いが、冬場は知らず知らずのうちに「かくれ脱水」になっているケースもあるという。

 冬は、エアコンの使用など居住環境の向上が、日々乾燥状態で生活していることになることも。「そこに夏場と異なり、水分の摂取量が少なくなると、脱水に陥りやすい。本人も気付かない『かくれ脱水』の危険性が潜んでいる」と服部教授。「手先の皮膚がかさかさする」「口の中が粘る」「やる気や食欲の低下によるだるさ」「めまいや立ちくらみ、ふらっとする」などがあれば、脱水のサインだ。服部教授は、脱水症状が進むと血液の粘度が高くなり、血管が詰まり脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を引き起こす要因になると指摘し、「乾燥は一つ間違えると命に直結する」と警告している。
冬場の脱水予防には、夏場と同じように、のどが渇いてなくても、こまめな水分補給に努め、意識的に水分摂取の回数を増やすことが大切だ。しかしノロウイルスなど感染症にかかった時は早めの「経口補水液」を活用する。谷口教授によると、軽度から中程度の脱水や「かくれ脱水」の状態時が特に効果があるという。また砂糖20〜40グラム、塩3グラム、水1リットル、レモン汁適宜をあわせることで、家庭でも「経口補水液」を作ることができるので、「病院へ行くまでの応急に使うなどしてほしい」(谷口教授)としている。
感染症などによる深刻な脱水症状と、その一歩手前の「かくれ脱水」。「かくれ」は本人の自覚が少ないので、気付けば重い脱水になることも。冬の脱水予防や、脱水状態の正しい知識などは、服部教授や谷口教授が監修するサイト「かくれ脱水JOUNAL」で詳しく知ることができる。