日体大が裏口入学

morinobu20072011-05-10

日体大裏口入学 1人100〜300万円で野球部に

 大学スポーツ界の名門、日本体育大学(東京都世田谷区)の経営母体、学校法人「日本体育会」の元理事長が90年代の数年間にわたって、複数の受験生の保護者から1人あたり100万〜300万円の現金を受け取って同大に推薦入学させ、野球部に入部させていた疑いがあることが8日、分かった。現在も学校法人の理事を務めている元理事長はこの日、本紙の取材に金銭の授受を否定した。しかし、日体大側は近く詳しい調査を始める模様だ。
 元理事長は体育学部の教授を務める一方、1966年から32年間、野球部監督、その後同部部長、総監督として活動。2002年6月からは日本体育会の常務理事に就任、05年6月からは3年間、理事長をしていた。学校関係者らによると、金銭の授受は野球部監督、理事時代に集中していたという。
 西日本在住の男性は90年代のある春、大学の同窓で当時監督だった元理事長に「息子を入学させたいが、高校時代の野球の実績が乏しい。何とかしてもらえないか」と相談したところ、元理事長は「何とかできるかもしれない」と答えた。
 その年の秋、男性は元理事長から都内ホテルの飲食店に誘われた。男性が無地の封筒に入った300万円を手渡すと、元理事長は「そんなに気を使わなくていいんだよ」と話し、背広の内ポケットにしまったという。
 その後、男性の息子は推薦枠で合格。野球部で活動し、卒業している。男性は「良くないこととは思ったが、野球の実績がない息子を入学させる近道だと思った」と語った。ほかにも同様のケースがあり、本紙が確認できただけで600万円が支払われていた。
 同大には約40の運動部があるが、推薦枠は各部長らが協議し、部活動の実績などに応じ、決定される。例年、推薦枠は500人で、野球部には十数人の枠が割り当てられる。
 推薦枠の対象となる生徒は全国高校総体、国体、全国選手権などへの出場が原則。この結果を基に大学側が生徒に声をかけ、例年8月に各運動部の練習に参加させて実力を測る「セレクション」を実施している。
 当時、推薦合格者に明らかなバラツキがあったことから「選定方法がおかしいのではないか」という声が出ていた。合格者の最終決定は教授会での承認が必要だが、元理事長は野球部だけでなく、学内にも強い影響力を持っていた。
 ◆元理事長に聞く 日体大の元理事長は8日、横浜市内でスポーツ報知の取材に対し、次のように答えた。
 ―野球部への推薦で裏口入学のために、受験生の親から試験前に金を受け取ったことはあるか?
 「ない。推薦に値する選手だから推薦した。現金を受け取るなんてそんなことはあり得ない。1円ももらっていない」
 ―1人300万円を渡したと話す証言者はウソをついている?
 「いやいや、入学後に『息子をよろしく』とあいさつをされたことはある。この方からは(05年の)理事長就任祝いや餞別(せんべつ)をもらったことはある」
 ―いくらですか?
 「びっくりするような金額だった」
 ―野球部の推薦枠での人選はどのように行われるのか。
 「最終判断は監督がする。コーチに相談したりするが、監督が決め、部長が確認して教授会で承認される」
 ―お金はもらってないということで間違いないか?
 「推測だが、入試で落ちた人がそのような話をしているのではないか。入学を条件としてお金はもらっていない。推薦で入部した(当該)選手は、良くもないし、悪くもないレベル。一生懸命、部活動をやるので(推薦で)取った」
 ◆日本体育大学硬式野球部 大学は1949年創立。52年創部の野球部は64年に発足した首都大学野球連盟に加盟。67年秋に初優勝し、これまで計19回。現在開催中の春季リーグは勝ち点3で東海大と並んでいる。合宿所とグラウンドは横浜市青葉区にある。OBには元ロッテ投手の園川一美氏、元広島投手の山内泰幸氏、現オリックス投手の小林雅英らがいる。指導者も多数輩出。今春のセンバツでは高嶋仁監督の智弁和歌山高をはじめ9校をOBが率いた。 最終更新:5月9日(月)15時31分